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出版物 BRAIN

頭痛と脳動脈解離
脳動脈の壁が裂けて起こる脳動脈解離は若年層に起こり易く、激しい頭痛や頸部痛をしばしば自覚します。脳梗塞やくも膜下出血の原因にもなる、怖い病気です。専門医に診てもらう必要があります。 国立循環器病研究センター
脳血管内科
部長 豊田 一則
解離はなぜ起こる?
 動脈の壁は、内側から内膜、中膜、外膜の三層構造を呈しています。このうち内膜に亀裂が生じてそこから血液が入り込み、動脈の壁が裂けてゆく病態を解離と呼びます。解離は大動脈や全身の動脈に起こり得ますが、とくに頸部や頭蓋内の動脈に起こる脳動脈解離は脳卒中の原因にもなるので、注目されています。解離は交通事故や頭部打撲などの外傷でも起こりますが、スポーツや日常生活のふとした動作で首をひねったり伸ばしたりしただけでも起こることがありますし、原因が見当たらない場合もあります。全ての年代で起こり得ますが、とくに若年者や働き盛りの世代に起こり易いのが特徴です。

解離の症状は?

図1:脳動脈解離のpearl and
string sign

左椎骨動脈の血管造影側面像
を示す。膨れて拡張した箇所
(pearl、矢頭)と狭くなった箇所
(string、矢印)が併在している。
  頭痛や頸部痛が脳動脈解離の代表的症状として知られていますが、必発というわけではありません。典型的な痛みは急性に一側性に起こりますが、非典型的な頭痛として自覚する場合も少なくありません。また脳動脈解離を契機に、解離を起こした動脈が閉塞したり、解離した部位から血栓と呼ばれる血の塊が飛んで末梢側の動脈を閉塞した場合には、脳梗塞が起こります。この場合、運動麻痺や言語障害などの各種神経症状を呈します。解離を起こした頭蓋内の動脈が膨れて破れた場合は、くも膜下出血を起こし、意識障害や激しい頭痛が現れます。
 わが国の「脳血管解離の病態と治療法の開発(S C A D S)」研究班が2006年に行った非外傷性脳動脈解離4 5 4 例の実態調査によれば、脳梗塞またはその前触れである一過性脳虚血発作などの虚血性脳卒中を起こした患者が全体の53%、くも膜下出血などの出血性脳卒中を起こした患者が28%、両方を併発した患者が5%を占め、頭痛など脳卒中以外の出来事で解離を診断された患者は全体の14%でした。ただし脳卒中を伴わない脳動脈解離は、専門的な診断を受けることなく見逃されてしまう場合も考えられますので、実際には頭痛だけを呈する脳動脈解離が、もっと多く存在するかもしれません。

解離の診断法は?
 脳動脈解離を診断するためには、頸部や頭蓋内の動脈の画像検査が必要です。具体的には頸部血管超音波検査や頭部MR血管撮影(MRA)で動脈の異常を指摘された後に、カテーテルを用いた詳しい脳血管造影検査で確定診断されます。典型的な血管造影の写真を図に示します。動脈が膨れて拡張している箇所と、狭くなった箇所が併存しており、その形態からpearl and string sign (真珠と紐) と呼ばれます。これは動脈の壁が裂けて本来の血管腔(真腔) の脇に出来た偽腔が、その壁が弱いために拡張したり、偽腔内部に血栓が溜まって真腔を圧排したりして見られる所見です。
 脳動脈解離の大半は脳卒中を合併するため、脳卒中で緊急入院して調べて行く過程で、解離の診断に至ることがほとんどです。

治療と予防
 繰り返しますように脳卒中発症に伴って見つかることが多く、脳梗塞やくも膜下出血の急性期治療として必要な内科治療や手術、血管内治療などが行われます。頭痛を契機に脳動脈解離が見つかった場合は、MRAなどの脳動脈画像検査を頻回に行い、万が一解離部位が拡張して破裂の危険が高い場合には、手術や血管内治療を選ぶ場合もあります。
 格闘技などの激しいスポーツを契機に解離を起こした方には、同種のスポーツを自粛してもらうこともあります。しかし、日常生活での何気ない頸部の伸展や捻りなどでも解離を起こすことが多いため、きっちりと予防することは困難です。
 脳動脈解離は比較的まれな病態と考えられてきましたが、画像診断の発達に伴い診断機会が格段に増えてきました。あらたな治療法や予防法の開発が、今後期待されます。

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